第8回 横浜市障害者差別解消検討部会会議録 日時 平成27年8月20日(木)10時00分~12時15分 開催場所 市庁舎5階 関係機関執務室 出席者 (五十音順)石渡委員、井上委員、内嶋委員、大野委員、大羽委員、神崎委員、佐藤委員、清水委員、鈴木委員、須山委員、中瀬委員、永田委員、奈良﨑委員、浜崎委員、松島委員、山下委員、前沢委員、 欠席者 和田委員 開催形態 公開(傍聴者人) 議題 1 市が行うべき取組について(前回の継続) 2 市内の事業者が取り組むべきことについて 3 市民に取り組んでほしいことについて 4 「市への提言」の案について 議 事 1 開会 ・出席状況報告 ・配付資料確認 ・会議途中の休憩時間の予定 ・傍聴者に関する報告 2 議題 (1) 市が行うべき取組について(前回の継続) (石渡会長)前回からの続きとなるが、議題の1つ目「市が行うべき取組に ついて」、まず事務局から資料の説明をお願いしたい。 (事務局) (資料1等について説明) (石渡会長)あらかじめ提出された各委員の意見が資料1にまとめられているが、まず③の「会議、イベント等の開催に関すること」。区役所、市役所等での会議の開催や、講演会等のイベントの開催において、市がどのような配慮をすべきか、注意すべき差別的取扱いはどのようなものか、などについて、補足説明や意見のある方はお願いしたい。 (神崎委員)会議等についての意見は資料1のとおりであるが、私が特に強調しておきたいのは、前回にもお話ししたが、視覚障害のある人に文書を読んで伝えたり、又は視覚障害のある人から聞き取って提出書類を書くという作業は、そう単純なものではないということである。 その上で、横浜市においては、視覚障害者に対してきちんと文字の情報を提供する、又は代筆をするといったスタッフを養成するための機関を設けていただきたい。そして、養成したスタッフを派遣するなどの仕組みをつくっていただきたい。 (清水委員)イベント関係ではないが、市が取り組むべきことについて、学校関係のことがまだ入っていないので、一つ事例を話しておきたい。 何回か前の検討部会で、障害者権利条約で「インクルーシブ教育」が言われていて、日本は条約を批准しながら実際とは乖離しており、後々問題になるとの話をした。横浜市でも「インクルーシブ教育」が実現している部分があり、それが普通級に在籍をしている聴覚に障害のある子であるが、この子たちにノートテイクが完全保障されていないという問題がある。 2007 年に80 回から120 回に増えたという経過はあるが、例えば、中学校では英語が年間130 時間あるので、1教科分もカバーできていない。この検討部会の会議を例に挙げると、2時間の会議に最後まで要約筆記がついており、聴覚障害のある委員も他の委員と同じ土俵で議論ができる。仮に1時間で要約筆記の人が帰ってしまうと、この会議は止まってしまう。 私たちは予算要望の中で毎年ノートテイクの回数増を言っているが、厳しい財政事情を理由として毎年退けられている。「インクルーシブ教育」は、まずはできるところからということで、横浜市の責務として、聴覚障害のある子のノートテイクの完全保障を実施する必要があると思う。教育分野のこととして掲げておきたい。 (奈良﨑委員)「インクルーシブ教育」の意味が分からない。 (石渡会長)「インクルーシブ教育」については、いろいろと考え方があるが、通常の学級に難聴の子供が共に学んでいるということがあって、そのことを「インクルーシブ教育」という言葉で紹介があったのだと思う。 (清水委員)「インクルーシブ社会」とは全ての人が排除されない社会ということで、「インクルーシブ教育」とは、障害者が排除されない教育である。障害者権利条約第24 条では、一般教育制度の下で初等中等教育を享受できると定められている。 (鈴木委員)石渡会長、清水委員が言われたように、障害のある子も障害のない子も共に学ぶということが基本の考え方であると思う。その方法については、いろいろな方法論があり、同じ場で学ぶのがよいのか、時々同じ場で学ぶのがよいのか、いろいろとやり方はあると思う。 清水委員の趣旨は、共に学ぶというところを保障しなければいけないのに、一番大事な情報の保障、先生や友だちの言っていることを分かりやすくノートに書いて教えてあげるというサービスが十分行き届いてないということであると思う。 (奈良﨑委員)提言に書くのであれば、「インクルーシブ教育」とそれだけを書いても分からない。今説明してくれたことを書いた方が分かりやすいと思う。 (石渡会長)事務局で案を作成するときに検討をお願いしたい。他に会議、イベント等に関して意見はあるか。 (奈良﨑委員)知的障害の場合、一つの人もいるかもしれないが、二つ支援が必要であると思う。一つは、移動のときによくガイドヘルパーを使うということ。もう一つは、私は国連の関係の会議等に参加させていただくことがあるが、会議の際の要約筆記などの支援をもう少し検討してほしい。 知的障害の人に支援者の同席を認めておきながら、支援者の交通費が出ないというのもどうなのかと思う。検討していただければと思う。(須山委員)聴覚障害者について、介助者として手話通訳者と筆記通訳者をつけるということだけでは、おそらく会議についていけない人もいるのではないか。 手話通訳は伝えることのほぼ100%を表すことができると思うが、要約筆記の場合は細部までは打たれていない。重要な部分は出ているが、全く聞こえない人が要約筆記の文章を読むだけで全体を理解することはできない。声が聞こえて要約筆記の文字も見える場合はスムーズに会議についていくことができると思うが、全く聞こえない人は要約筆記を読むだけで理解をして会議についていくことは難しい。 例えば、「今ここを読んでいるよ」と会議の進行状況を指差しで教えてくれたり、終了後に会議内容をまとめたものを見せて再度確認することなども必要である。分からないときに資料を指してくれる、今話していることを教えてくれるなど、そういった介助についても盛り込んだ方がよい。 また、前回にお話ししたが、要約筆記を行っている場合の会議の途中の休憩についても入れていただけると有難い。 (石渡会長)各委員の意見を伺っていると、会議等においては、全体に対しての情報の保障を行うとともに、個別の方への情報の保障、それぞれの配慮ということが、どの障害においても必要であると思う。そして、先ほど財政状況の話もあったが、公的なサービスとして保障するということだけでなく、市民の力であるとかボランティアなどによる支援のあり方なども考えていく必要があると思う。時間をかけて考えていかなければならない。 (石渡会長)それでは、④の「区役所等の設備の改善に関すること」に移りたい。区役所、市役所等の市の施設の設備で、改善に取り組んでほしいことについて、補足説明や意見等のある方はお願いしたい。 (松島委員)トイレのことを意見として書いたが、追加したい。ボタンを押して扉を開けて入るが、トイレの中の側のボタンの位置が使いにくいことがある。もう少し奥側に付けた方がよい。また、トイレから出るときに、入り口の近くにある「閉める」のボタンを押してしまう人が多いようであり、そうすると「使用中」のままになってしまい、次に使いたい人はいつまで経っても使えない。入り口の近くに「閉める」のボタンがあるから、ついそうしてしまう人が多いのだと思う。中の側のボタンはもう少し奥にあった方がよいと思う。 (浜崎委員)車いす用のトイレのことであると思うが、トイレのドアの外側にも「開ける」と「閉める」のボタンがあり、中にも「開ける」と「閉める」のボタンがある。外に出てから「閉める」のボタンを押すべきところを往々にして中側の「閉める」のボタンを押してトイレから出てしまう人がいる。そうすると、外からは開けられなくなってしまう。また、トイレ内のベッドを使って、正しく元に戻してくれていないと入れないことがある。必ず元に戻してほしい。 (鈴木委員)松島委員の意見は、トイレの中側の「閉める」のボタンの位置が使いにくい場合があること。それから、出るときの「閉める」のボタンの使い方の話の2点である。 (神崎委員)一点追加させていただきたい。市庁舎の関内駅側のエレベーターのことであるが、私はいつもエレベーターの案内の音声を聞いて、その方向に向かい、エレベーターに乗るが、その音声が小さくてよく聞きとれない。気づくのが遅くなると、エレベーターは行ってしまう。 言いたいことは、設備のことを提言するのはもちろん良いことであるが、設備があればそれでよいということではなく、設備をいかに作動させるか、まちづくりの委員会等で検討していただくことも必要かもしれないが、ソフト面のことも考慮していただきたいということである。設置すればそれでよいということではなく、いかに有効に稼動させるかも大事である。 (鈴木委員)資料1の一つひとつは当事者の方々の声であり、これに沿って直していっていただければと思う。神奈川県は平成20 年にユニバーサルデザイン推進指針を策定し、構造物や設備の基本的な方向性を出しているようであるが、市としては、どのように設備の改善に結びつけていくのか。仕組みはあるのか。 (事務局) 横浜市では、ユニバーサルデザインという言葉ではなく、福祉のまちづくり条例を大分以前に制定しており、障害のある人を含めて、使いやすい建物や設備を整備していこうと取り組んでいる。 建物や設備の条件等を示しているが、新たに建築する場合などは、担当の部署で確認を行っている。また、当事者の方などから改善のご意見があれば、それについて検討を行ったりしている。仕組みの概要としては以上である。 (清水委員)福祉のまちづくりに参加しているが、福祉の風土づくりの頃を含めると既に40 年くらい経っていると思う。ハードとソフトが一体となった取組をと考えており、私も引き続き意見を言っていきたい。 (石渡会長)この検討部会の結果をまちづくりの委員会などにも提供していく必要があると思う。行政の仕組みの中で検討していただきたい。 (奈良﨑委員)最近、エレベーターの降り口が乗り口と反対側になるものが増えてきている。案内放送のタイミングについても配慮が必要である。 (石渡会長)それでは、⑤「その他」に進みたい。これまでの①から④以外で、市による「差別的取扱い」や「合理的配慮の提供」について、追加の意見などがあればお願いしたい。 (松島委員)資料1のとおり、車いす利用者の話をしっかりと聞いてほしいと意見を書いたが、主に言語障害のある人ということで、記載の追加をお願いしたい。 (石渡会長)今のご意見もそうであるが、特にこの項目は、行動そのものというよりも、姿勢、意識の問題という部分が大きいように思う。 (石渡会長)それでは、⑥「市民への啓発に関すること」に移りたい。障害者差別に関する市民への啓発についてであるが、追加の意見などのある方はお願いしたい。 (特になし) (石渡会長)それでは、⑦「相談及び紛争の防止等のための体制の整備に関すること」に移りたい。障害者差別を受けたと思った場合などの相談に関することであるが、補足説明、追加の意見などがあればお願いしたい。 (鈴木委員)差別と感じた場合の相談の場に関することであると思うが、例えば、国の資料などを見ると、行政相談委員による行政相談であるとか、法務局、地方法務局の人権擁護委員による人権相談といった例が挙がっている。しかし、私自身もそういった方々に関わったことはなく、障害のある方にとってもない方にとっても、あまり一般的ではないような気がする。そういったあまり広く知られていないところに大事な人がいる。 そうであるならば、障害のない方以上に障害のある方には、そうした窓口があって対応してくれるということを整理してしっかりと伝えていかなくてはならない。また、行政相談委員ほか、相談の受け手となってもらう方たちに、障害のことを分かっていただくような研修等をしっかりと行っていく必要がある。 (石渡会長)国の法律の中でも、相談をどう受け止めていくのか、対応していくのか、明確になっていないとの指摘をされるところでもある。まず身近なところで受け止めていくことになると思うが、差別関連の窓口を新たに設けるのがよいのか、既にある相談のシステムと連携していくのかなど、その辺りは大きな課題であると思う。既に各委員から意見が寄せられているが、更に工夫や意見のある方はお願いしたい。 (清水委員)障害者差別解消法では、個人による差別が除外されていたり、自分で意思を伝えることが難しい重度重複障害や重症心身障害などの成人障害者など、谷間が存在することは事実であると思う。私たちの会では、何年も前から差別解消条例の制定を言い放しの大会宣言に入れてきたが、今年は市への予算要望の中に入れることにした。問題解決の仕組みづくりや障害への理解、啓発の促進の上乗せ横出しの課題は多くあると思うので 市への提言にも入れていただきたいと思う。 (奈良﨑委員)2点ある。1点目は、石渡会長や鈴木委員の意見と反対であるが、私は相談場所は要らない。そのような場所があっても、知的障害の人たちにとっては、平日の時間外や土日に行っても閉まっているので、公務員と同じ時間の窓口をいくつ増やしてもらっても使えない。 また、よく地域活動ホームの相談があると言われるが、実際に軽度の知的障害のある人が行くと非常に嫌がられる印象である。つくるのであれば、知的障害のある人のピアカウンセラーの部屋をつくってほしいと思う。 2点目は条例についてであるが、私はよく国際インクルージョンの会議にも出席させてもらっているが、そのようなものを作って何の役に立つんですかと私は言っている。条例で何か世界が変わったのか、そんなに街は変わったのか。 専門家の人はいろいろと言うが、私はそうしたことよりも、自分の地域にどのような人がいるのか知った方がよいと思う。 (石渡会長)条例については皆さんいろいろ考えがあると思うが、条例のことは今は置いておき、相談窓口のことをまず話していきたい。この相談のシステムでというところまでは難しいと思うが、いろいろと意見を出していきたい。 (須山委員)私もピア相談の相談員をしているが、障害者差別解消法ができたことで、職場において聞こえないことで差別され、他の部署に異動させられたなどの相談を受けたことがある。その場合、どこにつなげていけばよいのかが私自身もまだ分からない。聴覚障害者情報提供施設やリハセンターといったところはよく分かるが、つなげる先が分からない。 ピア相談員も勉強しなければいけないし、どこにつなげたらよいのかの資料づくりも必要である。ピア相談はピア相談だけで終わってしまう。他の相談窓口もその相談だけで終わってしまう。そのようなことがないように、有効につなげる仕組みを工夫する必要がある。 (佐藤委員)私たちの会でも相談窓口を持っている。内部障害であるので医療関係の相談が中心であるが、実は相談窓口があるということを知らない人がかなりいる。一般的にそうであるのかもしれないが、PRをしているつもりであってもそのような状況である。会員でも知らない人がいる。 しかし、では相談したくないのかというと、アンケート等を見ると相談はしたいと思っている人が多い。私たちは内部障害であるが、これは他の障害でも同じ状況なのではないかという気がする。世の中にはいろいろな相談窓口が存在しており、公のものもあれば、NPO 法人、私たちのような会が運営しているものもある。また、専門家が行っている窓口もあり、例えば医療では病気ごとに相談できるところを聞くことができたりする。 しかし、あまり知られていないものも多くある。よって、どのような窓口があるのかを聞くことができる窓口があるとよいのではないかと考える。どこに行くとどういう相談ができるのか、それを教えてくれる窓口のようなものがあると便利ではないか。市にはそのような、振り分けてくれる、教えてくれるといった窓口を設けることをお願いしたい。 (石渡会長)大きな課題であると思う。相談につながらない人が本当は大変な状況に追いやられてしまうということも考えなければいけない。 (前沢委員)精神障害の方の相談支援の事業所の職員であり、電話や来館での相談を受けている。一事業者の一相談員として、大変な思いをされたり、悔しい思いをされたことなどのお話を伺ったりするが、これからは障害者差別の解消であるので、解消につなげていくための明確なライン、仕組みがやはり必要であると感じている。これは言ってよいのだろうかなどの葛藤の中でお話をいただくので、気持ちを受け止めるだけでなく、解消にどのようにつなげていくのかが大事であるが、イメージがまだ湧かない。つなげていく明確な仕組みが必要である。 それから、資料にもあるとおり、民間事業所における出来事についてであるが、訪問事業の担当であり、出向いていくことが多いが、お店でのことであるとか、その方が住んでいる地域での出来事であったりをよく伺うが、障害者差別解消法では、民間事業所のことは管轄の所につなぐとなっている。 しかし、管轄と言っても、その方が直接相談できるかというとかなり敷居が高いと感じており、そこも危惧しているところである。折角声をあげていいんだという制度であると思うので、解消できる仕組みを明確にしていきたいと思う。 それから、地域協議会を地域に置くとなっているが、相談窓口とこの協議会は別のものであると思う。相談機関と地域協議会との連携、流れなどについて伺っておきたい。 (事務局) 簡単に概要をお伝えしたい。地域協議会は、法律では地方公共団体に置くことができると定められているものであり、必ず置かなければいけないものではないが、地域の関係機関により構成するイメージのものである。相談との関係としては、地域協議会は直接個別の相談を受けるのではなく、構成機関等が難しい相談等を解決していくための後押しをする役割を担うものとされている。 また、相談事例等を蓄積することで、地域における障害者差別解消の取組の課題を把握し、その後の取組につなげていくなどが期待されるところである。必ずしも役割が明確になっていない部分もあるように思うが、横浜市として、今後相談について検討していく中で、地域協議会の役割についても、きちんと整理していかなければならないと考えているところである。 (石渡会長)相談の解決のためのつなぎを考えていく中で、地域協議会の役割も明確になってくるように思う。それでは、議題の1つ目はここまでとし、休憩としたい。 (10 分間休憩) (2) 市内の事業者が取り組むべきことについて (石渡会長)会議を再開したい。議題の2つ目は、「市内の事業者が取り組むべきことについて」である。まず事務局から資料の説明をお願いしたい。 (事務局) (資料2の①等について説明) (石渡会長)それでは、「市内の事業者が取り組むべきこと」について、意見のある方はお願いしたい。 (神崎委員)申し上げたいことはたくさんあるが、考えてみると根っこは一緒で、これまでも話してきたように、障害のあるなしではなくて、一人の人としてどのように対していくのか、姿勢というか、意識の問題ではないかと思う。私もこの会議で視覚障害の立場で発言をしているが、では聴覚障害の方、知的障害の方のことを本当に分かっているかというと、分かっていないのかもしれない。でも、きっと分かっていないことがあるのだろうと思いながら参加しているし、他の人の話を一生懸命聞き取ろうとして来ており、それで委員の務めを果たしていると思っている。その程度のものではないか。 でも、そのようなことを誰でもが思いながら相手と対応していけば、役所であれ、事業者であれ、個人であれ、それで差別が全てなくなるものではないが、少なくとも今よりも良い世の中になっていくのではないか。それはどのパートにおいても、行政でも、事業者でも同じであると思う。 ただし、そうは言うものの、具体例を挙げると、例えば病院に行って一番困るのは、病院の入り口まではガイドヘルパーの福祉サービスであるが、病院の中に入れば医療の世界であり、医療の場であるので、ここからは違うということである。 私自身は変わっていないのに、いる場によって急にサービスの出所やお金が変わってしまう。同行援護の従業者の方は視覚障害者の誘導等について勉強をして資格を取ったりして仕事として行っているので、それなりのことができるが、病院の看護師や医師の方は誘導を習っているのかというと習っていない。そのため、怖い思いをしながら病院の中を誘導されることもある。レントゲン写真の説明も、画面を見ながらの説明はできるが、視覚障害者に説明する方法といったことは医師は習っていない。 よって、説明をされても何のことを言っているのか私たちには分からない。逆に、そのようなことはできるよということもあり、例えば、私は昨日はじめて入れ歯を作ったが、歯科医に「目が見えないと、入れ歯を入れるのが分からないでしょう」と言われた。誰でも入れ歯を見ながら入れることはないであろうし、大丈夫であるが、先生はそう思ってしまう。また、血圧を測ることは誰でもできることだと思うし、他の人が測るのを見ていれば様子が分かるが、視覚障害で説明がない場合は、どんな機械を使ってどのように測るのかが分からない。血管に穴でも開けられてしまうのかと思ったりする。皆さんは前の順番の人の様子を見ることができるので、はじめてでも安心して受けることができるが、全盲の人は「血圧を測ります」の説明だけでは怖く感じてしまうかもしれないし、そのために医療にかかるのが遅くなってしまうかもしれない。医療機関に関して情報が伝わらないというのはそういうことであると思う。 電車・バスについては、今は改札口で伝えると、駅の人が指定席まで案内してくれたり、入り口まで送ってくれたりと、鉄道会社もとても良くなったが、最近急いでいるときに、非常に待たされてつらい思いをしたことがあった。自分としては、階段の場所が分からないので、少し肘を貸してくれて、乗りたい電車まで急いで案内してくれればそれでよかったのであるが、非常に待たされ、乗りたい電車に乗れなくて困った。そのとき、「なぜこんなに待たされるのか」と尋ねたところ、駅員かボランティアの人かは分からないが、その人が言うには、まずあなたが乗る電車を確認して、それを信号所に伝えて、障害者が乗ることを電車と降りる駅に伝える。それで降りる駅からOKが出ないとダメなのだという。そのようなことがあった。 私の場合はその電車に乗せてくれさえすればよいが、例えば、車いすの人は、電車から降りるときもそうはいかないのだろう。しかし、そのケースごとに相手のことを少し考えてみれば分かりそうなことをマニュアルだけで動いている。そのような世の中になってしまったのだと、嫌な感じがした。 また、同じく電車のことであるが、私は電車に乗って空いている席があれば座りたいと思っている。「どこか空いていますか」と声をかけることも一向に構わないが、それを聞いて「開いてますよ」と誰かが立ってくれるのは本意でない。それを求めてはいない。「今、空いていませんよ」と言ってくれることでよいのだが、一般の方はそれができない。よって、私も尋ねない。そのような悪循環になっている。そこのところが掛け違っているように思う。 根っこをたどると、相手のことを考えながら、言っていることを聞く、希望を聞く、質問に答えるということができればよいと思う。そこが解決されれば、全部がドミノ倒しのように良くなっていくのではないか。 (石渡会長)ドミノ倒しの一個目を倒すために、この検討部会で動く方向性を明確にしなければならないとも思う。相手の立場を考えるということが、社会の中で当たり前になればと思う。 (奈良﨑委員)私もよくあるのは、知的障害と伝えて、障害について説明をしているのに理解してくれない病院や役所がある。先日、久しぶりに役所に行ったが、私のケースワーカーが誰か尋ねたところ、担当区域が細かく分かれているため2時間待たされた。また、そのときに、「まだ手帳を持っているんだ」と言われ、「はい、持っています。それがないと年金がもらえないから」と言うと、「ただ年金がほしいだけなら、手帳は要らないのでは」と言われ、ショックであった。 また、池袋の事件で、私たち知的障害の仲間がトラブルがあって、なかなか仕事が決まらないといった影響が出ている。その子は知的障害でてんかんがあるが、就職ができないでいる。テレビの影響はすごいと思う。 この子はこの障害だからという理由だけでみんなが断るなんてことがあるんだなと最近知った。今後、その辺について皆さんからアドバイスがあればうれしいと思う。 (石渡会長)皆さん、いろいろな体験をされている。神崎委員が先ほど言われたように、相手の立場に立って、今、何がベストであるのかを考える姿勢というものがいろいろな人に備わっていれば、解決できることはたくさんあるのだと思う。そこに向けてどう動いていくのかが課題であり、このことは次の議題にも関わってくると思う。 (内嶋副会長)市内の事業者、医療機関や交通機関、お店・レストラン、福祉サービスの事業所などについて今は議論しており、次に市民に取り組んでほしいことのテーマがあるが、議論としては分けておいた方がよいと思う。 神崎委員をはじめとして、障害のある人のことを理解してほしい、障害とは何か、今、何を欲しているのかということを汲んでほしいという話があったが、このことはおそらく個々の市民一人ひとりに対してもお願いしたいことであると思う。しかし、民間事業者は一般に多くの人を相手に仕事、営業等をしており、その相手の中には障害のある人も多く含まれている。 先ほど鉄道事業者の件で、障害のある人の安全の観点からあまりにも配慮し過ぎたために、物凄いことになってしまったとの話があったが、仕事として障害のある人にサービスを提供する人たちには、やはり一定水準の障害に対する理解は必要であると思う。 一般の人々にそれを全て求めていくことはかなりきついと思うが、障害者権利条約や障害者差別解消法ができた状況にあって、事業者はある程度高いレベルのものが求められると思う。 義務とまでは言わないが、せめて3障害とは何であるのかとか、どのような暮らしにくさが通常はあるのか、また、実際に応対している障害のあるお客さんがどのようなリクエストを持っているのかを知るための能力、技術、知識といったものを備えてもらう。市から呼びかけてということになると思うが、なるべく徹底していただく。 それも一つのやり方であると思う。事業を行う人たちには、少し高度な配慮を求めてもよいのではないかと考えている。障害当事者の委員をはじめ、他の委員の人たちも賛成ということであれば、提言に盛り込んでもよいのではないか。 (永田委員)福祉サービス事業などについてであるが、障害間差別はない方がよい。精神障害には運賃の割引がないので、差がないように割引にしてほしいと思う。 (松島委員)いろいろな問題があるので、次回までに紙にまとめて提出したいが、1点だけ伝えておきたい。病院、交通機関、お店などでは、私たち車いす障害者が行くと、拒否されたり、バスに乗るなと言われたり、そのような人権を無視したことが未だに多くある。そのことを強調して言っておきたいと思う。差別をする人はなぜか障害のことを全然分かっていない。また、一部であると思うが、分からないことがあって私たちが行くと、ソワソワしたり、声をかけると、何だ、何だとなってしまう。 (山下委員)主に病院とか福祉サービスで配慮してほしいと思うことであるが、発達障害や精神障害の人は、追い詰められて必死の思いで病院とか福祉サービスに行くわけであるが、状態を一通り説明した後で「ウチでは受けることができない」と門前払いをされ、それで終わってしまうところもある。また、昔よりは減ったが、「ここに行ってみたら」と無責任な紹介をされることもある。言われたとおりにそこに行ってみると、そこでも「ウチではその相談は受けられない」などと言われる。 内容を伝えることも、精神障害・発達障害の場合は大変労力を使うが、新たなところでまた一から話をしてと言われ、実際に相談したり診てもらうのに、どれだけの労力と時間を費やしてきたのだろうと思う。せめて受けられないのであれば、納得のできる説明をしてほしいと思うし、そこに代わる施設や病院、サービスを紹介してほしいと思う。 思うようなサービスを受けられないことも多く、そのために、同じ説明を何回もするのは大変である。適切なところを紹介してほしいし、次のところに話したことを伝えてほしいとも思う。 専門家であれば、素人よりも的確に伝えられることもあると思うので、そのような仕組みとしてほしい。精神障害・発達障害の場合、的確に伝えられないこともあるので、きちんと対応してくれると助かる。 (石渡会長)相談のあり方と障害者差別解消法とは深い関わりがある。検討部会の意見をどのように整理していったよいのか。障害のある人がしんどい思いをしないよう、解決に向かうような方向づけをしたいと思う。(井上委員)バスで目が見えない人がいたが、運転手が手帳等の確認についてよく分からなかったのか、バスが5分か10 分遅れた。手帳を見せなくても乗れるようにならないかと思った。 (浜崎委員)バスや電車の利用のことであるが、車いすのメンバーの中には、自分で定期券を持っていて、何の不自由もなく一人でエレベーターにも乗ってという人もいるが、私は電動車いすであるので、電車に乗るまでの手順がある。事前に改札に行って、乗りたい時間やスロープ板の用意、車両のどの辺りに乗るのかなどを伝える。降りる駅では駅員が待っていてくれるが、以前に利用したときに、同じ時間帯に同じ場所で他に車いすの方がおり、やむを得ず電車を一本遅らせたことがあった。 バスについては、道路とバスの間をスロープ板で渡してくれるが、あるとき、降りるところでスロープ板を出さないで、道路の段差ギリギリにバスを止めてくれて、スロープ板を使わずにすぐに降りられるようにしてくれたことがあった。運転手を対象に車いすについての研修もしてほしいし、マニュアルも必要であると思うが、臨機応変に対応してくれると、もっとスムーズにいくと思う。 (石渡会長)当事者の方の意見を行政を通して事業者に伝えていくことが必要であろう。 (石渡会長)終了の予定時間となっているので、ここまでとしたい。 (3) 市民に取り組んでほしいことについて (石渡会長)(3)の「市民に取り組んでほしいこと」と議題の4について、事務局から今後の取扱いの説明をお願いしたい。 (事務局) (3)「市民に取り組んでほしいこと」について、ご意見のある方は事務局まで提出をお願いしたい。 (4) 「市への提言」の案について (事務局) 議題の4つ目、「市への提言」の案については、少しだけ説明をさせていただきたい。 (資料3について説明) なお、資料3の11 ページ、4の「障害のある人とない人が共生する横浜市の実現に向けて」のところは、これまでの検討部会の議論を基に事務局で案を作成することも可能であるが、各委員の生の声、市民に伝えたいこと、市民へのメッセージを書いていただき掲載する方法もあると思う。できれば、この4の部分について、どちらの方法で作成していくのかを決めていただきたい。 (石渡会長)事務局で案を作成するA案。各委員の書いたものを載せるB案。どちらにするか、意見のある方はお願いしたい。 (大野委員)こうしたものの一番最後のところは事務局が作成するものと思っていたが、B案が出て、とてもよいと思った。B案の方がよいのではないか。 (石渡会長)この検討部会の良さは、それぞれの委員がその立場でないと伝えられないことを発言してくれたことにあると思う。私個人も各委員に書いていただくことでよいのではないかと思っている。 (石渡会長)それでは、各委員が市民に伝えたいことを書き、それを提言に載せていくということでよろしいか。 (了承) (事務局) 原稿の締切りについては後ほどお伝えしたい。資料3の提言の案については、事務局としても調整中であり、もう少し分かりやすい表現にしたいとも考えている。また、本日の議論を基に記載を加え、修正をして、また各委員にご確認をいただくという形で作成を進めていきたいと思う。 (奈良﨑委員)原稿も書くが、それを分かりやすく伝えるために、合わせてイラストを書いてもよいか。 (石渡会長)最初からこれはダメということはせずに、まずは作成してみるということでよいのではないか。 3 その他(連絡事項等) (事務局) 3点ある。1点目は、次回に向けて各委員にお願いしたいことの確認である。本日予定していた議題の3「市民に取り組んでほしいこと」について、ご意見のある方は9月11 日までに事務局宛にご連絡いただきたい。 また、「市への提言」の4の部分の原稿の作成についても、同じく9月11 日までにお願いしたい。字数は300 字程度以内。強制ではないので、書かないでよいという方はその旨ご連絡をお願いしたい。なお、提出はメール等でお願いしたいが、直接口頭でというご希望などがあれば対応させていただくので連絡願いたい。 2点目は、次回の日程である。9月29 日(火)10 時から。場所は本日と同じ市庁舎5階会議室。「市への提言」の内容の検討、確認となるが、検討部会として議論しておくべき論点を整理し、提言の最終確認をしていくこととしたい。 3点目は、西川委員退任のご報告である。ご本人からの申し出による。 (石渡会長)大野委員から本日配付のあったプレシンポジウムのチラシについて案内をお願いしたい。 (大野委員)(チラシについて説明) (石渡会長)その他、各委員から何かあればお願いしたい。 (特になし) 資 料・特記事項 資料1 各委員からの意見(市が行うべき取組の③~⑦関連) 資料2 「市への提言」の記載内容の検討 資料3 「市への提言」の案 参考資料1 寄せられた主な事例(事業者に関する事例の抜粋) 参考資料2 寄せられた主な事例(市民に関する事例の抜粋)